幻のワイン品種、チュハヴェリの魅力

幻のワイン品種、チュハヴェリの魅力

黒海を見つめるジョージアの黒ブドウ

黒海に面したジョージア西部の一帯は、太陽の光をいっぱいに浴び、古くからブドウ栽培が盛んな地域です。なかでも、グリアやアジャアといった限られた地域でのみ栽培されている黒ブドウ品種、それがチュハヴェリです。その名は、ジョージア語で「あなたはそれを試したことがありますか？」という意味。まるで、この幻のブドウの存在を誰かに尋ねたくなるような、不思議な響きを持っています。
チュハヴェリは、その名の通り、なかなかお目にかかることのできない希少なブドウです。かつては、この地域で広くワイン造りに用いられていましたが、時代とともにその数は減り、今では「幻のブドウ」と称されるほどになってしまいました。
しかし、近年、その希少性と、個性的な味わいが注目を集め始めています。太陽の恵みをいっぱいに受けた黒海沿岸の土壌で育ったチュハヴェリからは、力強く、複雑な風味を持つワインが生まれます。 濃厚な果実味と、スパイシーな香りが特徴で、長い余韻を楽しむことができます。 ジョージアの豊かな自然と歴史を感じさせる、個性的なワインを、ぜひ一度味わってみてください。

伝統的な樹上栽培

– 伝統的な樹上栽培

ジョージアという国で古くから親しまれてきたワイン造りにおいて、ブドウの栽培方法は、その品質を大きく左右する要素の一つです。かつてジョージアでは、チュハヴェリと呼ばれるブドウの品種を、高い木に絡ませるようにして育てる方法が主流でした。

太陽の光を燦々と浴び、風の通り道を作ることで、ブドウはゆっくりと時間をかけて熟し、凝縮感のある果実を実らせます。また、地面から離すことで、土壌の湿気からくる病気を防ぐ効果もありました。

しかし、近年では、この伝統的な栽培方法は減少傾向にあります。なぜなら、人の手で高い木にブドウを誘引し、管理するには、大変な手間と時間がかかるからです。その代わりに、管理のしやすい棚仕立てによる栽培が増えています。

それでも、古木のチュハヴェリから造られるワインは、他のワインでは味わえない複雑な風味と力強さを持ち、多くのワイン愛好家を魅了し続けています。それは、ジョージアの風土と人の手が長い年月をかけて生み出した、貴重な財産と言えるでしょう。

淡い色合いと豊かな果実味

チュハヴェリというブドウ品種をご存知でしょうか？その名の通り、果皮が狐の色のようにほんのりピンク色をしているのが特徴です。しかし出来上がったワインの色を見ると、意外にも淡い色合いに驚かれるかもしれません。これは、果皮が薄いため、色素が抽出されにくいという性質を持っているからです。

とはいえ、味わいまでも淡白というわけではありません。赤い果実を連想させるような豊潤な香りと、そこにスパイスのニュアンスが加わることで、複雑で奥行きのあるアロマを楽しむことができます。口に含むと、しっかりとしたタンニンが感じられ、飲みごたえも十分です。さらに、チュハヴェリは冷涼な地域で栽培されることが多いため、ブドウの酸味が際立ちます。この酸味が、果実味とタンニンのバランスをうまく調和し、非常に上品で洗練された味わいを生み出しているのです。

栽培に最適な冷涼な石灰質土壌

チュハヴェリというブドウ品種は、冷涼な気候と水はけのよい土壌で栽培すると、その特徴を最大限に発揮します。中でも、南向きの斜面に見られる石灰質土壌は、チュハヴェリにとってまさに理想的な環境と言えます。太陽の光をふんだんに浴びることができる南向きの斜面は、ブドウの生育に必要な warmth を十分に確保します。そして、水はけのよい石灰質土壌は、ブドウの根が過剰な水分で腐ってしまうのを防ぎ、健やかに育てる役割を担います。

石灰質土壌は、単に水はけが良いだけでなく、ブドウの生育に必要なミネラルを豊富に含んでいる点も大きな特徴です。これらのミネラルは、ブドウに吸収され、複雑で奥深い味わいを持つワインを生み出す源となります。こうして生まれたワインは、しっかりとした骨格を持ちながらも、エレガントで繊細な風味を持つ、まさにチュハヴェリの魅力を余すところなく表現した一本となるのです。

晩熟と貴腐菌との戦い

ハンガリーを代表する白ブドウ品種、チュハヴェリ。その熟成の遅さはワイン愛好家の間ではよく知られており、収穫は他の品種よりも大幅に遅れ、時には11月の後半になることもあります。晩秋の冷たく湿った空気の中でブドウはゆっくりと糖度を高めていきますが、その一方で、あるリスクと隣り合わせの状況に置かれます。それが貴腐菌の存在です。貴腐菌は、霧がかった湿度の高い環境を好み、ブドウの果皮に付着して生育します。ブドウに貴腐菌が繁殖すると、独特の芳香をもたらす反面、果実の水分を奪い、収量を大幅に減少させてしまいます。収穫時期の遅れは、ブドウが貴腐菌の影響を受けやすくなるという、生産者にとって大きな悩みの種と言えるでしょう。しかし、熟練した生産者は、この困難な状況を逆手に取ります。彼らは長年の経験と最新の技術を駆使し、貴腐菌の発生を注意深く観察し、コントロールすることで、その影響を最小限に抑えながら、最大限にその恩恵を受ける方法を熟知しているのです。こうして収穫されたブドウからは、貴腐菌の複雑な香りが加わった、奥行きと芳醇さを兼ね備えた、他に類を見ない個性的なワインが生まれます。晩熟と貴腐菌。それは、まさに自然と人間の織りなす、繊細で絶妙なバランスの上に成り立つ、ワイン造りの芸術と言えるでしょう。