ワインの個性派？ミルランダージュを知る

ワインの個性派？ミルランダージュを知る

ブドウの成長とミルランダージュ

ブドウの房をよく見てみると、粒の大きさが異なることに気づいたことはありますか？
まるで小さな粒が房の中に紛れ込んでいるように見えるかもしれません。
これは「ミルランダージュ」と呼ばれる現象で、決して珍しいことではありません。

ミルランダージュとは、ブドウの花が咲き終わって果実になる時期に、一部の果実が十分に大きく成長せず、
小さくしわくちゃなまま残ってしまうことを指します。
原因はさまざまであり、
例えば開花時期の気温が低い日が続いたり、
雨が長く降り続いたりすると、
ブドウの花は受粉がうまくいかず、
果実が肥大しないことがあります。
また、土壌に含まれる栄養分、
特に窒素が不足していても、
果実の成長に悪影響を及ぼすことがあります。

ミルランダージュは、
ブドウの収穫量や品質に影響を与えるため、
農家にとっては悩みの種です。
そのため、
農家はブドウの生育状況を注意深く観察し、
開花時期の気温管理や、
適切な時期に肥料を与えるなど、
ミルランダージュの発生を抑えるための工夫を凝らしています。
健やかに育ったブドウは、
芳醇なワインの原料となります。
私たちがおいしいワインを楽しめる裏には、
農家のたゆまぬ努力があることを忘れてはいけません。

品質への影響：良い面と悪い面

一見すると、ミルランダージュはブドウの房に小さな粒が混ざることで、品質を落としてしまうように思えるかもしれません。実際、多くの場合、ブドウの粒が十分に成長しない「結実不良」として捉えられ、収穫量の減少に繋がる可能性も否定できません。

しかし、視点を変えてみると、ミルランダージュはワインに複雑な個性を与える要素になり得るのです。小さな粒は、通常の大きさの粒と比べて皮の割合が高くなります。そのため、ワインに凝縮感や渋みのもととなるタンニン、そして美しい色素を、より多く与える可能性を秘めているのです。

例えば、濃厚な赤ワインを生み出すブドウ品種、カベルネ・ソーヴィニヨンなどは、ミルランダージュの影響を受けることで、さらに深みのある味わいに仕上がることがあります。凝縮感やタンニンの増加は、長期熟成の可能性を高め、時間の経過とともに複雑で円熟した味わいへと変化していく、魅力的なワインを生み出す力となります。

一方で、ミルランダージュは過剰に発生してしまうと、ワインに青っぽさや渋みを与えてしまう可能性も孕んでいます。しかし、経験豊富な栽培家や醸造家は、その年の気候やブドウの生育状況を見極め、適切な剪定や収穫時期の調整など、様々な工夫を凝らすことで、ミルランダージュを逆手に取り、品質の高いワイン造りを目指しています。

生産者の視点：ミルランダージュとの付き合い方

ブドウの果実に着く粒の数が少ない、あるいはまばらな状態を「ミルランダージュ」と呼びますが、これは一概に悪いものと断定できません。むしろ、積極的にこの現象を栽培に取り入れる生産者も存在します。

通常、粒がびっしりと詰まった房は、見た目が豊かで品質が良いと判断されがちです。しかし、粒と粒の間隔が狭く、風通しが悪くなることで、病気の原因となるカビが発生しやすくなります。逆に、ミルランダージュによって粒の大きさが不揃いになると、房全体に空間が生まれ、風通しが良くなります。その結果、病気のリスクを減らし、健全なブドウを育てることができるのです。

また、ミルランダージュが起こったブドウは、残った粒に水分や養分が集中するため、凝縮感の強い果実になります。これを活かすことで、ワインに独特の深みと複雑さを与えることが可能です。

もちろん、過度なミルランダージュは収量減に繋がりかねません。しかし、経験豊富な生産者は、土壌や気候、ブドウの品種を見極め、ミルランダージュをコントロールしながら、質の高いブドウを収穫しています。そして、そのブドウから生まれるワインは、他にはない個性と奥深さを持ち合わせていると言えるでしょう。

消費者へのメッセージ：多様なワインを楽しむ

ワインを愛する皆様へ

ワインを選ぶとき、ラベルに並ぶ情報に戸惑うことはありませんか？ 特に耳慣れない言葉を見つけた時、戸惑いを感じるかもしれません。「ミルランダージュ」という言葉も、その一つかもしれません。

しかし、どうかご安心ください。「ミルランダージュ」は、決してワインの品質を落とすものではありません。 むしろ、自然の力がブドウに与えた個性であり、それを活かそうとする生産者の情熱の証なのです。

「ミルランダージュ」を経たブドウは、濃厚な味わいや複雑な香りを持ち、他にはない個性的なワインを生み出します。それは、まるで厳しい自然と向き合い、その力を最大限に引き出した、生産者の挑戦ともいえるでしょう。

ワインの世界は、まさに多様性に満ちています。 普段とは違うワインに挑戦してみませんか？ そこには、きっと新しい発見と感動が待っているはずです。