ピコ島のブドウ畑を守る「クライス」
ワインを知りたい
先生、「クライス」ってなんですか?ワインの本で読んだんですけど、よく分からなくて。
ワイン研究家
「クライス」はね、ポルトガルにあるピコ島って島のワイン畑で見られる石垣のことだよ。この島、海に囲まれているから、風がとっても強いんだ。
ワインを知りたい
あ!だから石垣でブドウの木を守っているんですね! でも、どうしてそんなに強い風が吹くんですか?
ワイン研究家
そう! ブドウの木や実が、強い潮風で傷つかないようにしてるんだ。それだけじゃなくて、石垣に太陽の光が当たって反射するから、ブドウの実が甘く熟すのにも役立っているんだよ。
クライスとは。
ピコ島という島のブドウ畑で見られる「クライス」という言葉を説明します。この島はポルトガル領のアソーレス諸島にあり、海からの強い風が吹きつけます。そのため、ブドウの木が風で折れたり、実が塩の害を受けたりしないよう、島に広がる溶岩でできた台地を砕いた石を積み上げて石垣を作っています。この石垣は「クライス」と呼ばれ、強い風からブドウを守るだけでなく、ブドウの実がしっかりと熟すように、太陽の光を当てる役割も担っています。
大西洋に浮かぶ火山島
青い海に囲まれたポルトガル領アゾレス諸島。9つの島々からなるこの楽園は、大西洋の真っ只中に位置しています。その中でもひときわ目を引くのが、ユネスコ世界遺産にも登録されているピコ島です。この島は、海底火山の噴火によって誕生したという、他の島にはない魅力を持っています。島の中央には、ポルトガル最高峰であるピコ山がそびえ立ち、その雄姿は見る者を圧倒します。標高2,351メートルにも及ぶその姿は、まさに大西洋の巨人と言えるでしょう。
しかし、この雄大な自然は、そこに暮らす人々に厳しい試練を与えるものでもありました。特に、ピコ島の豊かな土壌を生かしたブドウ栽培は、容易な道のりではありませんでした。常に吹き荒れる強風は、ブドウの木をなぎ倒し、せっかくの実を傷つけることも少なくありません。また、潮を含んだ風が運ぶ塩分は、土壌を痩せさせ、ブドウの生育を妨げます。それでも、この島の人々は諦めませんでした。先祖代々受け継いできた知恵と工夫、そして熱い情熱によって、自然の猛威に立ち向かい、個性豊かなワインを生み出してきたのです。
場所 | 特徴 | ワイン造りへの影響 |
---|---|---|
アゾレス諸島(ピコ島) | – 大西洋に位置する – 海底火山の噴火で誕生 – ポルトガル最高峰のピコ山がある |
– 強風によるブドウへの被害 – 潮風による土壌への塩害 |
ブドウ畑を守る石垣「クライス」
ポルトガル領のアゾレス諸島に浮かぶピコ島。この島は、その名の通り雄大なピコ山の活火山によって形作られた火山島です。島全体が溶岩台地で覆われたこの地で、人々は古くからブドウ栽培を行ってきました。ピコ島のブドウ畑でひときわ目を引くのが、黒々とした溶岩石を積み上げた石垣「クライス」です。クライスは、火山島ならではの地形と気候が生み出した、ブドウ畑を保護するための知恵の結晶と言えるでしょう。
大西洋に浮かぶピコ島は、常に強風にさらされています。特に冬場は、激しい風が吹き荒れ、ブドウの樹をなぎ倒してしまうこともあります。また、潮を含んだ風が直接ブドウに当たると、塩害によってブドウが傷んでしまうこともあります。そこで、この過酷な環境からブドウを守るために、人々は溶岩石を用いて石垣を築き始めました。 クライスは、風を遮ることで、ブドウの樹を強風や塩害から守る役割を果たしているのです。 黒い溶岩石が作り出す幾何学模様は、訪れる人々に強い印象を与えます。ピコ島のブドウ畑は、火山が生み出した雄大な自然と、そこで生きる人々の知恵が織りなす、他に類を見ない景観を作り出しているのです。
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | ポルトガル領 アゾレス諸島 ピコ島 |
特徴 | 火山島、溶岩台地、強風と塩害 |
ブドウ栽培の工夫 | 溶岩石の石垣「クライス」 |
クライスの役割 | 強風や塩害からブドウを守る |
潮風からブドウを守る
碧い海に囲まれたピコ島では、潮風がブドウ栽培において重要な意味を持ちます。 海から吹き付ける湿った風は、ブドウ畑にミネラルを運ぶ一方で、塩分を含んでいるため、ブドウに悪影響を及ぼす可能性も秘めているのです。
ピコ島のブドウ畑で見られる特徴的な石積みの壁「クライス」は、強い日差しや雨風からブドウを守るだけでなく、この潮風からブドウを守る役割も担っています。高く積み上げられた石灰岩の壁は、海からの風を遮り、ブドウの葉や実に塩分が付着するのを防ぎます。
塩分は、ブドウの生育を阻害するだけでなく、糖度が上がりにくくなるなど、品質にも悪影響を及ぼします。クライスは、潮風からブドウを守ることで、健全な生育を促し、高品質なブドウの収穫を可能にする重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
要素 | 影響 | 対策 |
---|---|---|
潮風 |
|
クライス(石積みの壁)
|
太陽の恵みを最大限に活かす
太陽の恵みを受けた芳醇なワインは、ブドウの栽培環境によって大きく左右されます。その点で、「クライス」と呼ばれる石垣は、ブドウ栽培において重要な役割を担っています。
クライスは、強風や潮風からブドウを守る役割を果たします。ブドウは繊細な果実のため、強風にさらされると実が傷ついたり、生育に悪影響が出たりすることがあります。クライスは、まるで壁のようにブドウ畑を囲むことで、風からブドウを守り、健やかな生育を促します。
さらに、クライスは、黒色の溶岩石を積み上げて作られることが多く、この岩石の特性が、ブドウの生育に適した環境を作り出す鍵となります。溶岩石は、太陽の熱を効率よく吸収し、日中に蓄えた熱を夜間にゆっくりと放出します。この熱が、ブドウの生育に必要な温度を保ち、昼夜の寒暖差が大きい地域でも、ブドウが冷え込むのを防ぎます。
また、クライスによって囲まれた空間は、風通しが穏やかになるため、ブドウの実が風でこすれて傷つくのを防ぐ効果もあります。
このように、クライスは、太陽の光を最大限に活用しながら、ブドウにとって最適な環境を作り出す、まさにブドウ栽培の知恵と言えるでしょう。
項目 | 内容 |
---|---|
クライスとは | ブドウ畑を囲む石垣のこと |
材質 | 黒色の溶岩石 |
役割1:風よけ | 強風や潮風からブドウを守り、健やかな生育を促す。ブドウの実が風でこすれて傷つくのを防ぐ。 |
役割2:温度調節 | 溶岩石が太陽熱を蓄熱し、夜間にゆっくりと放出することで、ブドウの生育に必要な温度を保つ。 |
伝統と文化を継承する
ポルトガル、アゾレス諸島のピコ島に広がる独特な景観。溶岩でできた黒い石垣が、幾何学模様を描くようにブドウ畑を囲んでいます。これは、ピコ島の人々が「クライス」と呼ぶ、火山活動が生み出した厳しい環境と共存するための知恵の結晶です。
強い海風からブドウを守るため、また、太陽の光を効率的に集めて蓄熱するため、先人たちは溶岩を積み上げて石垣を築きました。その昔、火山噴火によって島は焼け野原と化しましたが、人々は諦めることなく、溶岩の大地にブドウ栽培の道をたのです。
クライスは、単なる石垣ではありません。何世紀にもわたって受け継がれてきた、ピコ島の人々の不屈の精神と、自然への深い敬意の象徴です。その景観は、2004年にユネスコ世界遺産に登録され、今もなお、訪れる人々に、ピコ島の伝統と文化を語りかけています。
項目 | 内容 |
---|---|
場所 | ポルトガル、アゾレス諸島ピコ島 |
特徴 | 溶岩でできた黒い石垣(クライス)がブドウ畑を囲む |
クライスの目的 | – 強風からブドウを守る – 太陽光を集め、熱を蓄える |
歴史 | 火山噴火後、人々が溶岩の大地にブドウ栽培を再開 |
文化的価値 | – ピコ島の人々の不屈の精神と自然への敬意の象徴 – 2004年、ユネスコ世界遺産に登録 |