ブドウ栽培

生産方法

ワインの質を決める?冬季剪定の重要性

冬の剪定とは、その名の通り、ぶどうの木が冬の間に眠っている時期に行う剪定作業のことです。日本では1月から3月頃、南半球の国々では7月から9月頃が剪定の時期にあたります。 この時期、ぶどうの木はまるで冬眠している動物のように、静かに春の訪れを待っています。活動を休止しているため、剪定によって余分な負担をかけることなく、翌年の生育を調整することができるのです。 冬の剪定の目的は、主に二つあります。一つ目は、樹形を整え、日当たりと風通しを良くすることです。不要な枝を切ることで、太陽の光がまんべんなく当たるようになり、おいしいぶどうを実らせることができます。また、風通しが良くなることで、病気の発生を予防することにもつながります。 二つ目は、結実量を調整し、品質の高いぶどうを収穫することです。剪定によって花芽の数を調整することで、実の数を制限し、残った実に栄養を集中させることができます。その結果、一粒一粒が大きく、甘みと香りが凝縮された、質の高いぶどうを収穫することができるのです。 冬の剪定は、翌年のぶどうの収穫を左右する大切な作業です。
土壌

ワインの味わいを左右する土壌

ワインの原料となるぶどうは、太陽の光を浴びて育つだけでなく、根を張る土壌の影響を大きく受け、その味わいを変化させます。土壌は、ぶどうの生育に必要な水分やミネラル分を供給する役割を担っています。ミネラル分は、ぶどうの果実味や酸味、香りに複雑さを与え、ワインに個性や深みを与えます。 例えば、水はけのよい砂質土壌で育ったぶどうからは、軽やかでフルーティーなワインが生まれます。反対に、水はけの悪い粘土質土壌で育ったぶどうからは、タンニンが豊富で重厚なワインが生まれます。 また、石灰岩質の土壌はミネラルが豊富で、ぶどうに力強い酸味とミネラル感を与え、長期熟成に適したワインを生み出すと言われています。火山灰土壌で育ったぶどうは、スモーキーな香りを持ち、複雑な味わいのワインになることがあります。 このように、土壌の性質によって、ワインの味わいは繊細に変化します。ワインを味わう際には、産地や土壌の特徴にも目を向けてみると、その奥深さをより一層楽しむことができるでしょう。
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ぶどう樹を守る冬支度:土寄せの重要性

ぶどう栽培において、冬を迎える前の重要な作業の一つに「土寄せ」があります。これは、11月から12月にかけて、ぶどうの樹の根元周辺の土を盛り上げ、まるで温かい布団をかけるように、根を寒さから守る作業です。 なぜ土寄せが必要なのでしょうか? 寒さの厳しい冬の間、土壌は凍結し、ぶどうの樹の根にダメージを与えてしまう可能性があります。特に、新しく植えられた苗木や、まだ根が十分に張っていない若い樹は、寒さに弱いため、土寄せによる保護が欠かせません。 土寄せは、凍結しやすい地表と根の間に土の層を作ることで、断熱効果を高め、根を冷気から守ります。また、土寄せによって、根の周りの水分量を保ち、乾燥を防ぐ効果もあります。 土寄せを行う際には、根を傷つけないように、優しく土を寄せることが大切です。盛り上げる土の高さは、10~20cm程度が目安となります。 土寄せは、ぶどうの樹が厳しい冬を乗り越え、春に力強く芽吹くために欠かせない作業と言えるでしょう。
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ブドウの成長:展葉がもたらすもの

春の柔らかな日差しが、凍てついた大地を優しく照らし始めると、長い冬の間、静かに眠っていたブドウ畑にも、再び生命が目覚める季節がやってきます。土の中では、冬の寒さで活動を休止していたブドウの根が、温かさを感じてゆっくりと目覚め、活動を再開します。根の先端からは、新しい根が力強く伸び始め、土壌の奥深くから、生命を育むための水分や栄養分を吸収し始めます。 地上では、枯れ木のように見えたブドウの樹にも、春の息吹が感じられます。茶色く乾いた枝の節々からは、小さな緑色の芽が顔をのぞかせ、日ごとに大きく膨らんでいきます。それはまるで、長い冬眠から覚めたブドウの樹が、再び力強く生命を輝かせる瞬間であり、春の訪れを告げる喜びの歌のように感じられます。 春の光と温かさに包まれたブドウ畑は、これから始まる新たな成長と豊穣への期待感で満ち溢れています。やがて訪れる収穫の喜びに向けて、ブドウの樹々は、春の光を浴びながら、力強く葉を茂らせ、花を咲かせる準備を始めます。
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ワインの質を左右する「摘房」の重要性

- ぶどうの生育をコントロールする「摘房」「摘房」という言葉をご存知でしょうか?あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、美味しいワインを作るためには欠かせない作業の一つです。ワインの原料となるぶどうは、樹にたくさんの房を付けます。そのまま全ての実を成長させてしまうと、栄養が分散してしまい、一つ一つの果実が小さく、味も薄くなってしまうのです。そこで、質の高いぶどうを育てるために必要なのが「摘房」という作業です。摘房は、余分なぶどうの房を摘み取る作業です。 房の数を減らすことで、残った房により多くの栄養を行き渡らせることができます。その結果、果実の一つ一つが大きく成長し、糖度も上がり、香りや風味も豊かになるのです。摘房は、時期や方法、残す房の数など、経験と技術が必要とされる繊細な作業です。 例えば、時期が早すぎると、摘み取った房の分の栄養が、他の房に十分に行き渡らないことがあります。また、時期が遅すぎると、摘み取った房の分の栄養が、すでに他の房に吸収されてしまっているため、効果が少なくなってしまいます。このように、摘房は、量より質を重視し、厳選されたぶどうから、最高のワインを生み出すために欠かせない作業と言えるでしょう。
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ワイン用ブドウ栽培の匠の技:摘芯

- 摘芯とは 春の訪れとともに、長く厳しい冬から目覚めたブドウの木は、力強く芽を伸ばし始めます。土壌から水分や養分を吸収し、そのエネルギーは新しい枝や葉へと向かいます。この成長の勢いは目覚ましく、放っておくと枝は際限なく伸び続け、葉は太陽の光を求めて互いに重なり合うほどに茂ります。 しかし、ブドウの栽培においては、この旺盛な成長は必ずしも良いことばかりではありません。なぜなら、ブドウの木がその力を枝葉の成長に注ぎ込んでしまうと、肝心の果実であるブドウの房に十分な栄養が行き渡らなくなってしまうからです。 そこで登場するのが「摘芯」という技術です。摘芯とは、文字通り新しく伸びてきた梢の先端を摘み取る作業のことです。 摘芯を行うことで、ブドウの木の成長エネルギーは梢の伸長から、ブドウの実の肥大へと転換されます。その結果、ブドウの房に栄養が集中し、果実の肥大が促進され、糖度や色づきが向上し、質の高いブドウを収穫することができるのです。 まさに、摘芯は、ブドウ栽培家が自然の力と技術を駆使して、高品質なブドウを育てるための重要な作業の一つと言えるでしょう。
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シャンパン造りの舞台裏:ネゴシアン・マニピュランって?

黄金色に輝く泡立ちと、華やかで芳醇な香りは、特別な瞬間を彩るお酒として、多くの人を魅了してやみません。それが、フランスのシャンパーニュ地方で伝統的な製法で造られる、シャンパンです。 その複雑で繊細な味わいを生み出すためには、原料となるブドウの栽培から醸造、瓶詰め、熟成に至るまで、長い年月と多くの人々のたゆまぬ努力が必要とされます。 中でも重要な役割を担うのが、「ネゴシアン・マニピュラン」と呼ばれる人々です。彼らは、自社で所有する畑で収穫したブドウだけでなく、契約農家から厳選したブドウも使用し、独自の製法でシャンパンを造り上げます。 ネゴシアン・マニピュランは、単なる醸造家ではなく、長年培ってきた経験と知識、そして優れた感性で、最高のブドウを選び抜き、その年の気候やブドウの出来栄えを見極めながら、絶妙なバランスでブレンドを行います。そして、彼らが目指すのは、自社の個性を表現した、唯一無二のシャンパンを生み出すことです。 このように、シャンパンは、自然の恵みと人の情熱が織りなす、まさに芸術作品と言えるでしょう。
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ぶどう栽培の基礎!長梢剪定とは?

ぶどうを育てる時、広く行われているのが『垣根仕立て』という方法です。この方法は、ぶどうの木が自然に伸びる力と、人の手で生育を調整する技術を組み合わせることで、質の高いぶどうをたくさん収穫できるように工夫されています。 具体的には、棚や支柱を立てて、ぶどうの枝をそれに沿って誘導し、まるで壁のように仕立てていきます。 この垣根仕立てと合わせて欠かせないのが『剪定』という作業です。剪定は、不要な枝を切ったり、枝の長さを調整したりすることで、ぶどうの木の生育をコントロールします。 剪定を行うことには、大きく分けて二つの利点があります。 一つは、太陽の光を浴びる葉の量を調整することで、すべてのぶどうの実に均等に栄養が行き渡るようにすることです。 もう一つは、樹全体の風通しを良くすることで、病気や害虫の発生を抑え、健やかに生育させることです。 このように、垣根仕立てと剪定は、質の高いぶどうを安定して収穫するために欠かせない、人の経験と技術が詰まった方法と言えるでしょう。
気候

ワイン用ブドウ栽培の脅威:遅霜

春の暖かさと共に、待ち焦がれていたブドウの生育が始まります。冬の寒さを乗り越え、土の中で静かに眠っていたブドウの樹々が、再び生命の息吹きを感じさせる瞬間です。しかし、春の喜びも束の間、ブドウ農家にとって悩みの種となるのが「遅霜」です。遅霜とは、その名の通り、ブドウの樹が芽吹いた後に発生する遅咲きの霜のことです。 一般的には4月頃に発生し、せっかく芽吹いたばかりの若い芽や葉を容赦なく枯らしてしまいます。 冬の期間、ブドウの樹は休眠期に入り、厳しい寒さに耐えられる準備をしています。そのため、冬に霜が降りても、ブドウの樹に大きな影響はありません。しかし、暖かくなって活動を開始した後の、まるでいたずらのような遅霜は、ブドウの生育に深刻なダメージを与えてしまうのです。 春の光を浴びて、緑色の小さな芽が顔を出したかと思うと、その小さな芽は、遅霜の冷たい風にさらされ、茶色く枯れてしまうことがあります。農家の人々は、長い冬の間、ブドウの樹を大切に守り、春の訪れを待ち焦がれていたことでしょう。それだけに、遅霜による被害は、彼らの努力を一瞬にして奪ってしまう、まさに「春の落とし穴」と言えるでしょう。
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ワインの味わいを左右する、短梢剪定とは?

ぶどう畑を眺めると、地域や栽培品種によって、その景色は大きく異なります。広がる緑の葉、規則的に並ぶ支柱、幾何学模様を描く枝ぶり。これらを決定づける要素の一つに、「仕立て」と呼ばれる技術があります。 仕立てとは、ぶどうの樹の枝を支柱や針金を使って固定し、その生育方向や樹の形を整える作業のことです。まるで盆栽を育てるように、人の手で自然の成長をコントロールしていく繊細な技術が求められます。 仕立て方には様々な種類があり、その土地の気候や土壌、栽培するぶどうの品種などに合わせて最適な方法が選ばれます。例えば、日当たりの良い場所では、太陽の光を効率よく浴びられるように、枝を水平に広げる仕立て方が適しています。逆に、雨が多い地域では、風通しを良くして病気の発生を抑えるために、枝を高く upright に伸ばす仕立て方が有効です。 適切な仕立てを行うことで、ぶどうの樹は健やかに育ち、質の高い果実を実らせることができます。太陽の光をふんだんに浴びた果実は、糖度が上がり、風味も豊かになります。また、風通しが良くなることで、葉や果実に発生する病気を予防することができます。 このように、仕立ては、ぶどう栽培において非常に重要な役割を担っています。それぞれの土地の気候や品種に最適な仕立て方を選ぶことで、高品質なぶどうを安定して生産することができるのです。
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ワイン造りの芸術:単一畑の魅力

ワインの世界において、ブドウ畑は単なる果樹園ではありません。画家がキャンバスに向き合うように、ワイン生産者たちはブドウ畑を個性豊かな芸術作品を生み出すアトリエと捉えています。広大なワイナリーの中には、丘の斜面や谷底など、場所によって様々な顔つきを持つ区画が存在します。太陽の光を浴びる角度や風の通り道、土壌に含まれる水分量、その全てがブドウの生育に影響を与えるため、同じワイナリーの中でも区画ごとにブドウの味わいは微妙に異なってきます。 そして、ひとつのまとまった区画、すなわち「単一畑」から収穫されたブドウだけを使って造られるのが、単一畑ワインです。単一畑ワインは、まるで特定の画家の筆使いや色彩が際立つ作品のように、その土地ならではの個性をはっきりと表現します。ブドウを育んだ土壌の成分や気候といったテロワールからの影響を、ありのままにボトルに詰め込んだ特別なワイン、それが単一畑ワインなのです。
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ワインの個性派?ミルランダージュを知る

ブドウの房をよく見てみると、粒の大きさが異なることに気づいたことはありますか? まるで小さな粒が房の中に紛れ込んでいるように見えるかもしれません。 これは「ミルランダージュ」と呼ばれる現象で、決して珍しいことではありません。 ミルランダージュとは、ブドウの花が咲き終わって果実になる時期に、一部の果実が十分に大きく成長せず、 小さくしわくちゃなまま残ってしまうことを指します。 原因はさまざまであり、 例えば開花時期の気温が低い日が続いたり、 雨が長く降り続いたりすると、 ブドウの花は受粉がうまくいかず、 果実が肥大しないことがあります。 また、土壌に含まれる栄養分、 特に窒素が不足していても、 果実の成長に悪影響を及ぼすことがあります。 ミルランダージュは、 ブドウの収穫量や品質に影響を与えるため、 農家にとっては悩みの種です。 そのため、 農家はブドウの生育状況を注意深く観察し、 開花時期の気温管理や、 適切な時期に肥料を与えるなど、 ミルランダージュの発生を抑えるための工夫を凝らしています。 健やかに育ったブドウは、 芳醇なワインの原料となります。 私たちがおいしいワインを楽しめる裏には、 農家のたゆまぬ努力があることを忘れてはいけません。
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ワインの天敵:ミルデューとの戦い

おいしいワインは、原料となるブドウの品質によって大きく左右されます。しかし、ワイン用ブドウは、病気に弱く、栽培には多くの苦労がつきまといます。その中でも、ブドウ農家を長年に渡り悩ませてきた脅威の一つが「うどんこ病」です。 うどんこ病は、カビの一種である「ミルデュー」によって引き起こされる病気で、湿度の高い環境を好みます。うどんこ病に感染したブドウは、葉や果実に白い粉のようなものをまとったように見えます。これは、ミルデューの胞子が大量に発生した状態であり、風に吹かれたり、雨に流されたりすることで、周囲のブドウへと感染が広がっていきます。 うどんこ病に感染したブドウは、光合成を十分に行うことができなくなるため、生育が阻害され、実の成長にも悪影響を及ぼします。結果として、収穫量が減少し、ワインの品質にも深刻な影響を与える可能性があります。 こうした事態を防ぐため、ブドウ農家は、こまめな観察と適切な農薬の使用、風通しを良くする工夫など、様々な対策を講じています。おいしいワインを安定して供給するためにも、うどんこ病の脅威からブドウを守るための努力は、これからも続けられていくでしょう。
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ワイン造りに欠かせないブドウ栽培:棚仕立てとは?

ぶどうは、その品質によって出来上がるワインの味わいが大きく変わるため、栽培方法は非常に重要な要素となります。数ある栽培方法の中でも、棚仕立ては、ぶどうの樹を支柱と棚で構成された構造物に沿って成長させる方法で、世界中の多くのワイン生産地域で取り入れられています。 棚仕立ての最大の利点は、太陽の光を効率的に浴びることができる点です。棚に沿って枝を水平に伸ばすことで、多くの葉が太陽光を均等に浴びることができ、光合成が促進されます。その結果、糖度が高く、風味豊かなぶどうを収穫することができます。また、風通しが良くなるため、病気の発生を抑え、健全なぶどうを育てることにも繋がります。 さらに、棚仕立ては作業効率の向上にも貢献します。棚に沿ってぶどうが整然と並ぶため、剪定や収穫などの作業を効率的に行うことができます。また、機械化にも適しており、労働力不足の解消にも役立ちます。 このように、棚仕立ては、質の高いぶどうを安定して生産するために非常に有効な栽培方法と言えるでしょう。
気候

ワインの当たり年!グレート・ヴィンテージとは?

- グレート・ヴィンテージとは?ワインの世界でしばしば耳にする「グレート・ヴィンテージ」。これは、ブドウの生育期から収穫期にかけての天候条件に恵まれ、質の高いブドウが収穫できた年を指します。 ワインは農作物であるブドウから造られる飲み物です。そのため、その年の天候がワインの味わいに大きく影響を与えるのです。太陽の光をふんだんに浴びて育ったブドウからは、凝縮感があり、芳醇な香りを持ち合わせたワインが生まれます。糖度も高く、それに応じてアルコール度数も高くなる傾向があります。口に含むと、果実味が豊かで、複雑な味わいが広がります。そして、熟成にも耐えうる、長期熟成のポテンシャルを秘めたワインとなることが多いです。反対に、日照時間が少なく、長雨に見舞われた年は、ブドウの成熟が不十分になりがちです。そこから造られるワインは、水っぽく、薄っぺらい味わいのものとなってしまうこともあります。酸味が強く、渋みも目立ち、熟成にも向かない場合があります。「グレート・ヴィンテージ」は、まさに自然の恵みと、それを最大限に活かす人間の技術が融合して初めて生まれる、最高のワインを表現する言葉なのです。
生産方法

春の訪れを告げる作業、畝崩し

日本の冬は、おいしいブドウを育てるブドウ農家にとって、大変厳しい季節です。 なぜなら、厳しい寒さはブドウの木に大きなダメージを与えてしまうからです。特に、地面の表面に近いところに位置する根は、凍結しやすい為、細心の注意が必要です。 そこで、ブドウ農家は、冬を迎える前に「畝上げ」という作業を行います。 畝上げとは、ブドウの木の根元に土を盛り上げて、まるで小さな山のような形を作ることです。 このひと手間を加えることで、地表に近い根を土中の深い場所に移動させることができ、凍結の危険から守ることができるのです。 また、畝上げは、冬の厳しい寒さの原因となる冷たい風からブドウの木を守る効果もあります。 こうして、ブドウ農家は、冬の間もブドウの木が健やかに過ごせるよう、様々な工夫を凝らしているので す。そして、春には再び、おいしいブドウを実らせることができるのです。
気候

ワインの個性を作る「ミクロクリマ」

ワインを語る上で、「テロワール」という言葉は欠かせません。テロワールとは、ブドウを取り巻く生育環境すべてを指し、気候や土壌、地形、そして人の手が加わることで、その土地ならではの個性が生まれます。このテロワールを構成する重要な要素の一つに、「ミクロクリマ」があります。ミクロクリマとは、ブドウ畑という極めて狭い範囲の気候のことを指します。広大な地域全体の気候を表す「マクロクリマ」に対して、ミクロクリマは、同じ畑内でも場所によって太陽の光が当たる時間や風の通り道、土壌の水分量などが微妙に異なるため、ブドウの生育にも違いが現れます。例えば、斜面に位置するブドウ畑では、標高や向きによって、日照時間や気温、水はけなどが大きく変化します。南向きの斜面は、太陽の光を多く浴びるため、ブドウの成熟が早まり、豊かな果実味を持つワインを生み出す傾向があります。一方、北向きの斜面では、日照時間が短く、気温も低いため、ブドウの成熟はゆっくりとなり、酸味とミネラル感が際立つワインが生まれます。また、谷底と丘陵地帯でも、気温や風の影響が異なります。冷涼な気候を好むブドウ品種にとって、谷底は冷気が溜まりやすく、霜害のリスクが高まるため、水はけの良い丘陵地帯の方が適していると言えます。このように、ミクロクリマは、ブドウの生育に大きな影響を与え、ワインの味わいを決定づける重要な要素の一つなのです。
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ワインの品質を左右する「グリーンハーベスト」

美味しいワインを作るためには、原料となるブドウの品質が何よりも大切です。ブドウの出来次第で、ワインの味わいは大きく変わってしまいます。そのため、ワイン生産者はブドウ栽培に大変な労力をかけています。中でも「グリーンハーベスト」という作業は、ブドウの品質向上に欠かせない作業として知られています。 グリーンハーベストとは、生育途中の房の一部を摘み取る作業のことを指します。摘み取る房の数は、残った房に十分な栄養が行き渡るように、生育状況を見ながら慎重に決める必要があります。時期としては、ブドウの実がまだ緑色のうちに、間引きを行います。日本では梅雨の時期と重なるため、作業は天候を見ながら進めなければなりません。 一見すると、せっかく実ったブドウを落とすのはもったいない行為に思えるかもしれません。しかし、敢えて果実の数を減らすことで、残ったブドウにより多くの栄養と太陽の光が行き渡ります。その結果、糖度が高く、風味豊かなブドウを収穫することができるのです。 グリーンハーベストは、ワインの品質を大きく左右する重要な作業です。この作業にかける手間暇こそが、芳醇な香りと深い味わいを生み出すワイン造りには欠かせないのです。
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ワインと水:ドライファーミングの秘密

「ドライファーミング」と呼ばれる農法は、ブドウ畑への人工的な水供給を一切行わない、自然の恵みにのみ頼る栽培方法です。降り注ぐ雨だけがブドウの生育を支えるため、まさに自然の力に翻弄される、賭けともいえる農法と言えるでしょう。 天候に左右されやすく、安定した収穫を得ることが難しいドライファーミングですが、ブドウ栽培にとっては厳しい環境こそが、ブドウ本来の力強さを引き出す鍵となります。土壌の奥深くまで根を張り巡らせたブドウの木々は、大地のミネラルを豊富に吸収し、凝縮感あふれる果実を実らせます。 こうして育まれたブドウから造られるワインは、力強く濃厚な味わいはもちろんのこと、その土地ならではの風土や個性が色濃く表現されます。まさに、自然の恵みと造り手の情熱が織りなす、唯一無二の味わいと言えるでしょう。
生産方法

ワインの生命線!新梢の役割とは?

春の穏やかな日差しが、冬の寒さで休んでいた大地を優しく照らし始めると、まるで眠りから覚めたかのように、ブドウの木々も活動を始めます。土の中深くで、冬の間、じっと力を蓄えていたブドウの木は、そのエネルギーを糧に、硬くなった樹皮を力強く押し上げていきます。そして、ついにその先端から、透き通るような緑色の小さな芽を顔を出すのです。この、春の訪れを告げるかのような、力強さと繊細さを併せ持つ小さな芽は、「新梢(しんしょう)」と呼ばれています。新梢は、やがて葉を広げ、光合成を行うことで、ブドウの実を実らせるための栄養を作り出す、まさにワインの品質を左右する大切なものとなるのです。春の光を浴びて、力強く芽吹く新梢の姿は、生命の力強さを感じさせ、私たちに春の訪れを告げるとともに、その年のワインへの期待も高めてくれるのです。
生産方法

ワインの味わいを決める「収量」の秘密

- ワインの収量とは?ぶどうを栽培し、ワインを醸造する過程において、「収量」は非常に重要な要素です。簡単に言うと、一定の面積の畑からどれだけの量のワインを造り出せるのかを表す指標です。ワインの収量は、一般的に「ヘクタール(ha)」あたりの「ヘクトリットル(hl)」で表されます。1ヘクタールは100メートル四方の広さで、約10アールに相当します。そして、1ヘクトリットルは100リットルですから、例えば「60hl/ha」と表記されていれば、100メートル四方の畑から6,000リットルのワインを生産できるという意味になります。収量は、ワインの品質に大きな影響を与える要素の一つです。収量が多い、つまり、同じ面積の畑から多くのぶどうを収穫すると、一つ一つのぶどうの味わいが薄まり、水っぽくなってしまう傾向があります。逆に、収量を抑え、ぶどうの数を制限することで、残されたぶどうにより多くの栄養分が行き渡り、凝縮感のある、風味豊かなワインを生み出すことができます。高品質なワインを造るためには、収量を抑えることが重要ですが、生産コストとのバランスも大切です。そのため、ワイン生産者は、土壌の質や気候条件、ぶどうの品種などを考慮しながら、最適な収量を追求しています。
生産方法

ワインの品質を決める「収穫」の重要性

太陽の恵みをいっぱいに浴びたブドウ畑。一年間の栽培の集大成である収穫は、ワイン造りにおいて最も重要な瞬間と言えるでしょう。待ち焦がれていた収穫期を迎え、畑は活気に満ち溢れます。 黄金色に輝く太陽の光を浴びて育ったブドウは、収穫のタイミングによって、その個性である味わいを大きく左右します。ブドウの甘味を決める糖度はもちろんのこと、爽やかさを与える酸味、そして、複雑なアロマを生み出す様々な成分が、収穫時期によって繊細に変化していくのです。 経験豊富な栽培責任者は、ブドウの房を手に取り、色や香りを確かめ、最適な収穫期を見極めます。そして、太陽の光が降り注ぐ早朝や涼しい夕方、最高の状態のブドウを丁寧に手摘みで収穫していきます。 収穫されたばかりのブドウには、一年間の労苦が実った喜びと、これから始まるワイン造りへの期待が込められています。それは、まさに、太陽と大地の恵み、そして、人の情熱が織りなす、ワイン造りの集大成と言えるでしょう。
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ワイン造りの秘密兵器!マッサル・セレクションとは?

- ブドウ畑からの選抜 ワインの品質は、ブドウの出来によって大きく左右されます。そのため、ワイン造りにおいて最も重要な要素の一つが、いかに優れたブドウを栽培するかということです。その中でも、「マッサル・セレクション」は、古くから行われてきた伝統的なブドウ樹の選抜方法であり、近年再び注目を集めています。 マッサル・セレクションとは、広大なブドウ畑の中から、まるで宝探しのように、優れた性質を持つブドウ樹を探し出すことから始まります。具体的には、収量が多い、病気に強い、質の高い果実を実らせるといった特徴を持つブドウ樹を、長年の経験と知識を持つ栽培家が選んでいきます。 選抜されたブドウ樹は、「母樹」として大切に管理されます。そして、その母樹から採取した枝を挿し木したり、接ぎ木したりすることで、全く同じ遺伝子を持つ「クローン」を育てていきます。こうして増やされたクローンは、新たなブドウ畑に植え付けられ、ワイン造りに利用されます。 マッサル・セレクションによって選抜されたブドウ樹は、その土地の環境に適応し、優れた品質のブドウを実らせる可能性が高いとされています。そのため、この伝統的な方法は、高品質なワイン造りを目指す生産者にとって、欠かせないものとなっています。
生産方法

ワインの品質を左右する「手摘み」

ワイン造りは、ブドウ畑で太陽の光を浴びて育ったブドウの実を一粒一粒丁寧に収穫することから始まります。この最初の工程であるブドウの収穫方法には、大きく分けて「手摘み」と「機械収穫」の二つがあります。 読んで字のごとく、人の手によって一房ずつ丁寧に摘み取っていくのが「手摘み」です。近年は、広大なブドウ畑を持つ大手ワイナリーを中心に、人手に頼らない「機械収穫」が主流になりつつあります。しかし、手間暇をかけて丁寧に造られる高級ワインの産地では、今もなお多くの生産者が「手摘み」を選択し続けています。 一体なぜ、彼らは時間と労力を要する「手摘み」にこだわるのでしょうか?それは、「手摘み」によって収穫されたブドウの品質が、機械収穫とは比べ物にならないほど高いからです。機械収穫の場合、どうしても実を傷つけてしまったり、未熟な実や枝葉が混入してしまうことがあります。一方、人の目で見て手で触れて収穫する「手摘み」であれば、傷のない完熟した実だけを選別することができます。 また、「手摘み」は急斜面や段々畑など、機械が入れないような場所でも収穫できるというメリットもあります。こうした場所では、古くからその土地に根付く伝統的なブドウ品種が栽培されていることが多く、高品質なワイン造りには欠かせない存在となっています。 このように、「手摘み」は時間と労力がかかる一方で、高品質なブドウを収穫するために欠かせない、伝統的な収穫方法と言えるでしょう。一本のワインには、たくさんの人々の努力と情熱が込められているのです。